メガネの裏はひとりじめⅠ




そんなあたしの名前を不思議そうに紡ぐ道留君を遮って。



『さささ先戻るねっ!』



早口で喋ったから少しどもってしまったけど、そんなのはこの際気になんかしていられない。



顔を隠したままそう言ってあたしは脱兎の如くこの場からドアに向かって走っていったのだった。



背中に、巳陵壱翔の今日三回目となる笑い声を聞きながら。



――…そして、結局。



道留君に吐いてもらおうとした疑問の答えは聞けずうやむやになったままで、あたしは生徒会室のドアをパタンと閉め、ドアノブを握ったままはぁーっとタメ息を吐き出す。



…なんか、今日は朝から慌ただしいな。



ふと朝から今現在まで思い返してみると、三木にフラれたり、今まで知らなかった道留君の素顔が知れたり、巳陵壱翔の怖さが少し和らいだり。



それと素顔は知れても道留君の謎がまた増えたり、…道留君の彼女になったり。



まだ1日の半分も経ってない時間内で、普段の平凡な生活の中では起こりそうもない出来事が立て続けに起こってしまったのだ。



だけど、その中で一番の出来事と言えば三木にフラれたことよりもやっぱり道留君の彼女になった、ということだろう。



道留君を信じて、自分から彼女にしてくださいと言ったものの未だ実感が沸かず。



これは夢なんじゃないかと、今さらになってそんなことを思ってしまっているあたしがいる。