そして、逃げ道が見つかればすぐさまその道にゴー。


ひまに出してこいと言われたもの――…提出期限が切れた化学のプリント3枚を持って雑音の中、席を立つ。


あたしにプリントを届けるというお仕事を済ませたひまもここにはもう用はないからと、あたしと一緒に退却。


席を立つ前にグイッと涙を自分でもう一度拭って、ひまの前で泣いちゃったってことが恥ずかしかったから、にへっと照れ隠しに笑ったら、

「ぶさいく。」

こんのぉ…。やっぱりムーカーつーくー!!この減らず口めっ!女顔めっ!バーカバーカバーカッ!!


反撃とばかりにボカッとひまの胸をグーパンチ。「痛くねぇよ。」そう憎たらしいことばっか返してくるひまの表情は少し、…ううん。心の底からなんだか辛そうだった。


だけどそれはほんの一瞬で。瞬きして次にひまを見た時には、ひまはもういつもの意地悪な表情に戻っていたんだ。



『(…あら?気のせい?)』



なんて、ひまの気持ちにも気づかずに気のせいで終わらせてしまうあたしって最悪だったと思う。鈍すぎる、あたし。


ひまが辛そうな表情をしていたのは、その時だけじゃなくて。

あたしの隣でひまはずっと、ずっと切なげにあたしを見ていたんだ――…。