クラスメートが言い合いをしているあたしとひまを気にしながらもやっぱり雑音鳴り止まない教室に突然響いたソプラノ。
突然、やって来た女の子。
今はひまだけだったはずのあたしの耳はこの時だけいつもより聴覚を倍発揮して、それをとらえた。
宮軒君、と、道留君の名前を呼んだ女の子の声を。
『(………え、)』
声――…いや、正確にいえば道留君の名前に――…を聞いた瞬間にピクッと反応した身体。
今まで巳陵壱翔よりはましだけど、それでも結構本気でムカついていた気持ちも一気に冷める。
一瞬でも逸らさなかった瞳をあたしは簡単にひまから逸らして道留君の方を見た。
おい!どこ見てんだコラ。
なんて頭の上に降ってくる怒気を孕んだひまの声なんか耳に入らない。どれだけあたしの耳はうまいことできてんだ、って話だけど。
だって、しょうがないじゃん。聞こえちゃったんだもん。気になるじゃん。道留君が、女の子に呼ばれたんだよ?
道留君が女の子と話してるのにひまと言い合いなんかしている場合じゃない。
『…、』
ただじっと。口を一文字にして女の子の方に向かう道留君の背中を追う。
道留君が自分に向かってきてくれていると気づいた女の子は道留君が自分の前に着くよりも先に教室に入って道留君のもとに駆け寄った。


