それからずるいあたしは、イブの優しすぎるセリフに甘えてさっきのことを話そうとした。
もちろん、巳陵壱翔のことは伏せて、道留君の態度のことだけを上手く話を変えて。
だけどそれは叶わず、話そうとする前に授業開始のチャイムが鳴ってしまって、次の休み時間までお預けになってしまった。
学園に鳴り響いたチャイムにイブは「あとでね?」鞄の中から取り出したティッシュをあたしに渡して"元気出せ可鈴!"にかっと咲いた笑顔。
渡されたティッシュで涙を拭いながらコクンと頷いてみたけど――…胸の中の罪悪感は増えていくばかり。
『(……どうしよう、)』
1限目はイブの大好きで得意でもある古典だった。
その他の教科だったら、イブは授業中にも関わらずあたしの話を休み時間から持ち越して聞いてくれていただろう。
だけどイブは古典だけはいつも真剣。自分から後ろを一度だって振り向かないし、携帯もいじらないし、寝たりもしない。
真面目に担当教科の先生の話を聞いているイブの小さな背中をちらり見て、机に突っ伏せるあたしは思う。
道留君は、チャイムが鳴り終わる寸前ギリギリに教室に滑り込んできた。


