メガネの裏はひとりじめⅠ



『…え、えへっ。ちょっと、ね、喧嘩しちゃったんだ。』



――…結局、嘘をついてしまった。


零れ落ちそうな涙を拭って、へらり、無理しているのがバレバレの笑みを浮かべてわざとおどけてみせる。



ごめんね、なんて、何回謝っても、それが心の中でなら意味はない。声に出さなきゃイブには伝わらない。


それはちゃんと分かってる。分かってる、けど、度胸がなくて弱い人間だから。本当のことは言えずに"ごめんね"を声にすることもできなくて。


"度胸がない" "弱い人間だから"

それを理由にするあたしはすっごくずるい。弱い以前に、やっぱり最悪だ。



「ええー!もう喧嘩したの!?可鈴早すぎっ。」



あたしの腰に手を回したまま下から見上げてくるイブは、もとから大きい瞳をさらに大きくして声をあげる。



―――ズキン

―――ズキン、ズキン


そんなあたしの"嘘"を信じて、「…しょうがないなぁ。」とん、とん。一定のリズムで背中を優しく叩いてくれるイブに胸がめちゃくちゃ痛い。


ぽたぽた。イエローゴールドの髪と色を合わせた眉を下げてあたしを慰めてくれるイブの顔が、涙で滲む。



「可鈴泣かないのー。このイブちゃんがちゃんと聞いてあげるから。ね?」



…ほんとに、ごめん。ごめんね、イブ。