だけどそれよりも巳陵壱翔のセリフに胸はグサリと鋭い刃物に突き刺されたような痛みを覚えた。
"最悪"
そんなの言われなくったって分かってる。大好きな彼氏を傷つけたあたしは最悪な彼女だって、ちゃんと分かってるもん。
でも巳陵壱翔には言われたくない。あたしと道留君が付き合ってるの知ってるのに、道留君の前で抱きしめてきたり誤解を生むようなことを言ったり。
巳陵壱翔も道留君が好きじゃないの?巳陵壱翔の行動だって、道留君を十分傷つけてると思う。人のこと言える立場じゃないよっ。
――…なーんて、こんなのただの八つ当たりだ。一番悪いのは、一番道留君を傷つけてしまったのはあたし。
ポタポタ。
憎たらしいほど綺麗な顔をした中身大魔王なイケメンに頭を掴まれながら泣くあたしって、端から見ればただのいじめられっ子だきっと。
道留君が横を通りすぎていった瞬間、ふわりと香ったシトラスの匂いに頭の中が一瞬で真っ白になって。
待ってとか呼び止める言葉も出なくて、ただ離れていく道留君の背中を見つめることしかできなかった。
それを今さら後悔しても、結果はたぶん変わりっこないだろうけど。


