メガネの裏はひとりじめⅠ



もしかしたらあたし、とんでもない奴を敵にしちゃったのかもしれない。道留君への"好き"以外はたぶん、巳陵壱翔に勝てるものがない。


完璧な容姿から性格の悪さ(あんな酷い悪戯、あたしは思いつかない)、きっと頭もいいだろうし。

なによりこのキレた時のリュウちゃん並みの怖さ。尋常じゃない。泣かない方がおかしいよ。



と。


「…俺、先行く。」



ポタリ。涙が落ちる1秒前。不意に殺気を漂わせる巳陵壱翔と小動物(うさぎ的な)になっているあたしの間に入ってきた掠れた声。


ちゃんと聞き取ったそれに反応して声がした方――…道留君の方を見ると、さっきと変わらず道留君は俯いたままで。


垂れる長い前髪で顔が隠れ、どんな表情をしているのかは分からない。


名前を呼ぼうと唇を開けば、それよりも早く道留君はあたしと巳陵壱翔の横を黙って通りすぎていった。


名前を、紡がせてはくれなかった。



「あーあ。彼女最悪ぅー。」



あたしと同じように道留君の立ち去る姿を見ていた巳陵壱翔がそう口にする。


がっしり。手はまだ頭を掴んだまま。いい加減離して欲しいんですが。