メガネの裏はひとりじめⅠ



いきなり伸ばした"あ"を連呼し出した道留君は何回かそれを繰り返したあと、変な声に凄みをきかせて言葉を投げた相手はもちろん巳陵壱翔。


"戻んねぇぞ"と聞いたセリフからすると、伸ばした"あ"を繰り返したのは声を戻すためだと理解する。少し安心。


いきなりされたらふつうにびっくりするよね。あと焦る。

でもたぶん道留君には、ハグされてなかったら笑ってた。大爆笑間違いなしだったと思う――…って、はわわっ。



『(ははハグされてるんだった…!)』



道留君の予想外な行動と変な声で危うく忘れそうになった今の状況を思い出してかぁっと。とうとうリンゴに変身。


相変わらず黒い髪にぴょこんと寝癖をつけて、メガネをかけた学園スタイルの道留君を見上げてるだけでも照れてしまう。


気を逸らそうとくりっ。振り返った先にはだらだらとしゃがみこませた身体を上げる巳陵壱翔の姿。



「あーあー言っときゃそのうち戻んだろ。その声もう聞きあきたわ。」



スラックスのポケットを漁りながらそう言って、巳陵壱翔は取り出したタバコを血色のいい唇で挟む。


こ、ここでタバコはダメだろ!!


さっきの道留君より焦りながら慌てて注意すれば、「バレねぇよチビ。」ニッと不敵に唇の端を持ち上げた。