メガネの裏はひとりじめⅠ



足を踏む2秒前。ギリギリ肩を抱く左手はいきなりグンッと体重をかけてきて、あたしの身体を力でしゃがませた。


その、しゃがんだほんとにすぐあと。0.何秒の単位であたしと一緒にしゃがんだ巳陵壱翔の頭上をひゅんっと一瞬で何かが駆け抜けた。



『(え、えええ…。)』



状況は不明。何が駆け抜けたのかも分からない。


ただ分かるのは、あと0.何秒しゃがむのが遅かったら、豪速球で駆け抜けた何かに巳陵壱翔の美顔は潰されていたってことだけで。


恐ろしい出来事に瞬きもしないで呆然と巳陵壱翔を見つめている、と。



「っ壱翔てめぇ!!可鈴泣かしてんじゃねぇよ殺すぞ。」



男の子が倒れる直前に聞いた高い声が巳陵壱翔の名前とあたしの名前をセリフに入れて怒鳴り声をあげた。


澄んだ空に響いたその高音は今再び聞いてみると変に高い。


そんな変な声をした知り合いはいないぞ――…と、抜けきれない恐怖を抱えたまま首を動かせば。



「…っぶねぇな。ふざけんなよ道留。」

「てめぇがな。なに避けてんだ。大人しく潰されてろよヘタレ。」

「…あ?誰にそんな口訊いてんだコラ。」



変な声の主、イコールお砂糖王子。イコール我が彼氏、道留君。