ほんとに。ほんとにほんとに。いくら見つめたって、んんん?と頭を捻ったって、目の前の男の子とは初対面としか考えられない。
ナチュラルブラウンの少し短い髪。
顔は比べたりしたらダメだけど道留君には負ける。いや、道留君を越える美男子なんてこの世に存在しないんだけど(きっと)。
だけどそうは言ってもかっこいい分類には入るはず。背も結構高いし、なんていうか爽やかさがある。…モテるな、この男の子。
比較的きちんと着こなされた制服から下へずずずっと。目を落として見た上靴の線の色は赤。
『(同期…、ですけど…?)』
いやいやいや!そーだとしても!!知らない。ほんとにマジで。はじめましてだよ。無意味に英語で言うとナイストゥーミートゥーだよ。
あたしの中では初対面の男の子。男の子の中では会ったことがあるあたし。
いつも通り登校して、下駄箱でローファーから上靴に履き替えようとローファーを脱いでいたときにあたしは男の子に声をかけられたのだ。
話があるんだけど、と。
あれから10分ぐらい経っただろうか。
そうだとしたら、あと5分でチャイムが鳴る。SHRが始まる合図が鳴る。リュウちゃんが教室に入る合図、が。鳴る。