『(い、いつの間に!?)』



道留君は、ソファーの上からもう下りていた。赤い絨毯の上に立って、あたしを見下ろしている。…笑いながら。



いつの間に――…多分、いや絶対。あたしが誰に祝ってもらうんだろうって考えていたときに道留君はソファーから下りたんだろう。



道留君の首から解かれた腕の手は、太股の上にぽんっと乗っていた。



笑う道留君に考えていた疑問を問えば、「へへっ。」悪戯っ子みたいに笑うだけで答えてはくれなくて。



「いーから。行くよ?」



教えてくれない理由はなに?まさかほんとに家族の人に祝ってもらうつもりなの…!?



眉間を押さえていた指は離れ、困惑いっぱいの瞳で道留君を見上げるあたしの手を道留君は掴む。



掴んで、立ち上がらせる――…「あ、忘れてた。」



突然ひらめきだした道留君。手のひらの上に握った手をぽんっと弾ませる仕草をしそうなそれ。



え、なに――…そう反応したときにはもう影を被って、秀麗な顔が近づいて。チュッと静かな空間に響いた音は、甘い。



「これからよろしくね?可愛い彼女さん♪」



ニッと唇の端に不敵な笑みを乗せて言った道留君との四度目のキスは、未来を共に歩くための挨拶。"よろしくね"のキスだった。