逸らして、視線をさ迷わせていた目を僅か数秒で道留君に戻す。といっても、ゆっくり、ゆっくり。わざと時間をかけてだけれど。
対峙した潤む瞳の中に映るのはムスリとした道留君。道留君の漆黒にはリンゴになっているあたし。
――…ドキン、ドキン。
煩いよ、心臓。ちょっと静かにしてよ。この距離じゃ道留君に聞こえちゃうでしょ。ああ、こんなに近くで見つめられたら息もしにくいよ。苦しい。苦しい。
『…、』
人間離れした、男の人に使うのには可笑しい"綺麗"って言葉がぴったりの顔。
どんなお父さんとお母さんからこんな綺麗な男の子が生まれるのか。やっぱりお父さんもお母さんも美形なんだろうな…。
ドキドキドキドキ。
もう、道留君の秀麗な顔に見惚れるしかない。
と。
道留君の芸術品みたいな顔とは対照に真っ赤に染まったあたしの平凡な顔には、道留君の少し冷たい手のひらがぴたり。
「一応言っとくけど、」ムスリとしていた表情がその切り出しで変わる。
「次、俺と二人の時三木とか他の男んこと考えてたら多分俺、本気でキレるからね。」
"なにするか分かんないよ〜。"


