なんて、王子様を見上げていたら。影はさらに火照るあたしを包み込み、柔らかい声色。笑顔が一緒に落ちてきた。



「ほら、可鈴も戻るよ?」



ほら、と同時にあたしへと差し出された王子様の右手。


火照る顔で、この手を掴み取ってもいいのかと。

困惑の瞳をちらりと王子様に持っていけば、王子様は「戻んないの?」笑顔から不思議そうな表情を浮かべる。



『…も、戻ります…。』



ドキン、ドキン。再び煩く音を立て脈打ち始めた心臓に、相変わらず火照り続けるあたしの顔。


カラカラに渇いた喉から絞り出した声で言葉を返すと、満足そうににっこりと笑う王子様。


そっと差し出された右手を取り、暫(しばら)くしゃがみこませたままだった自分の身体を立たせてもらったなら。

そこで離すのだと思っていた手は王子様が握り方を変えて指を絡ませてきたことによって恋人同士が繋ぐ手の形になっちゃって。



『(はわ、わわわ…っ。)』



それにかぁっと真っ赤になってわたわたと困惑するあたし。



「かわいー。」



そんなあたしを王子様は楽しむかのようにクスクスと笑いながら一歩、この場から足を踏み出したのだった。