『(…た、助かったぁあああ。)』



これはきっと、…そう!神様が舞い降りたんだ。絶対そうだそうに違いない。



超ナイスタイミングで鳴り響いたチャイムで王子様のキスから逃れられたことをあからさまに喜ぶあたし。


逃れられたことにより、口から零れるタメ息は必然的に安堵からなるもので。はぁあー。助かった助かった。


目の前に王子様が居るにも関わらず、それを忘れてあたしは盛大に息を零す――…そした、ら。



「…チッ。」

『(…え?)』



耳は前から小さく舌を鳴らす音を捕えた。


それに合わせて綻ぶ顔のまま前を向いた、なら。あたしの顔は再びゆでダコ、まではいかないけど一瞬で一気にリンゴ色。



「可鈴ムカつく…。」

『(ひゃああ…。)』



無理無理無理ー!!


王子様が発した言葉なんか全く耳に入らない。全神経が相変わらず頬っぺたに添えられている手に集中する。


ドキドキよりもっとすごい音。バクバク鳴る心臓。


瞬きをすればもう触れちゃうんじゃないかというぐらい至近距離にいる王子様に喉がクッと鳴った。