ガラリと変わって駅前よりも騒がしい今居る場所は、あたしが一人ふて腐れている間にホームの中に入ってしまっていた。



間もなく電車が来ます、と知らせるアナウンス。アスファルトを踏むコツコツと鳴るいくつもの靴音。



別に誰が騒いでるってわけでもないのにザワザワとしているその中で、道留君の声だけが耳に入る。



「今日壱翔達も一緒にデートするって言ってたでしょ?」

『…うん…。』

「でも俺、やっぱ可鈴とだけでしたかったからさ。」

『…。』

「勝手に別行動しよーって、壱翔と決めちゃったんだ。」



言わなくってごめんね?



普通だったら何回も無視されたことに対して怒るはずなのに、道留君はあたしが拗ねてる理由も分かっていたのか逆に謝ってくれた。



ほんとだったら道留君を無視したあたしの方が先に謝らなくちゃいけないのに。むしろ道留君は別に謝らなくてもいいのに。



道留君に謝らせてしまったことに、胸がギュッと押し潰されて痛みを訴える。



ゆらゆらと濡れて歪んでいく視界。



見上げる道留君の顔も歪んで、『…っごめんなさいー…。』謝るあたしに道留君は「何で?」頬っぺたを包んだまま指で器用に瞳に溜まる滴を払った。