「戻んないよ?」

『ノー!戻るのっ。』

「戻んないの。」

『戻るの〜!』

「ノー。二人でデートすんの。」



ほら行くよ。



グーッと力を入れて引っ張るのに、道留君の足は1ミリも前に動かなくって、終いには真似をしてきた道留君にあたしの方が手を引っ張られてしまった。



ダブルデートなのに。してくれるって昨日約束してくれたのに。



イブと巳陵壱翔が居る場所からだんだんと離れていって、ムスッとふて腐れるあたしは名前を呼ばれてもツーンと無視。



だって、道留君が悪い!



ただ手を掴まれて道留君に引っ張られて歩くあたしが道留君に何回目になるのか名前を呼ばれてようやく顔を上げた時は、もう周りの景色はガラッと変わっていた。



「可鈴、怒んないで?」



立ち止まる今まで、ずっと道留君が一方的に掴んでいた手は離れ、あたしと向かい合って立つ道留君はムッとして可愛くない表情してるあたしの頬っぺたを両手で包み込む。



あたしを見下ろす表情は困ったように眉が八の字に下がり、名前を呼んでたのに無視を続けたあたしを責めようとはしない柔らかい声色。