『…ふぇ?』



突然のことで赤く染まった頬っぺたも、ゆるゆると緩みにやけた口許もそのまんまに、あたしは道留君を見上げる。



見上げた道留君は「じゃあね、イブちゃん」あたしの後ろに居てずっと黙ったまんまだったイブに素敵王子様スマイルでそう言うと、次いで漆黒はあたしを映し出す。



「…なにその可愛い顔」

『…?』

「…まぁいっか。んじゃ、出発」



わっわっわわわっ。



道留君の一人言みたいなセリフにコテン、と首を傾げたあたしの道留君に掴まれている手は、出発と告げ一歩歩き出した掴む張本人によって引っ張られてしまう。



その向かう場所は目の前にある駅の中。



ようやくハッとして道留君が"出発"と言った意味を理解したあたしは慌てて後ろを振り向き『イブ頑張って…っ!』空いている手をひらひらと振る。



あたしの声にピクッと肩を上げ、気付いたように「…うんっ」とイブから返ってきた言葉にあたしは成功しますよーに。と、心の中でイブの恋を願った。



今から、あたしと道留君のデートが始まるのです。