人間は単純だ。
あんなにさっきまで悩んでいたのに、今、瞳子の中にあるのは―――、
アルフレッドの事だけだった。
どんな目で、その人を見つめているの?
どんな声を、その人に掛けてあげるの?
と。
最悪だ――――。
瞳子は自己嫌悪で吐き気がした。
口元を手で覆う。
苦しい―――
胸が苦しい―――
『助けて―――瞳子。苦しいっ……。胸が苦しいんだ』
瞳子の耳に彼の叫び声が聞こえる。
戻りたい――――
彼が、瞳子を呼んでいる。
「神緯っ……。会いたいっ……」
瞳子は、ただただ泣き崩れた。
すぐ隣から聞こえる声を、かき消すように。


