そういって、ドアを指していた人差し指を机へ向ける。
そこには蝋燭があった。

「もう随分丈が小さくなっちゃった」

「―――そういえば、そうね」


確かに、最初、此処にきた時よりだいぶ小さくなってしまった。
少し、不格好な蝋燭というのは可愛らしい。


「わかった、上へあがるわ」

なんとなくそうした方が良いような気がした。

「うん。あんまり人目に付かないようにお帰り」

「ええ」



紅茶、御馳走様と一言言ってから、クルリと向きを出入り口へ変え、元来たように帰る。


本当に、自分は此処に居てよいのだろうか。
瞳子は、自身の部屋へと戻りながら思案していた。

奏が来てる来てないにしろ、誰かが自分を連れ戻すために、関係のない者達を殺した可能性が大きいということだ。
巻き込んだのだ。
自分がこの世界に来たせいで。
そう思うと瞳子は身が裂ける思いだった。

クロノアに感謝しているのはけして嘘ではない。
だが、神緯という一個人を救うために、たくさんの命が奪われてしまった。
所詮、この行動は自身の独りよがりで自分のエゴでしかない。ただ、どうしたらいいのかわからないのだ。

どうしたら、『瞳子』を欺けるのか、
どうしたら『瞳子』の裁きから、彼を救えるのか―――が。



ふと、意識を遮る声があった。
無意識のうちに立ち止まる。

聞き取りづらいが、女の喘ぐ声だ。どうやら情事真っ最中のようだ。
聞こえてくるのはすぐ左隣の部屋。




――――其処はアルフレッドの部屋だ。


耳を塞いでしゃがみ込む。
どうしてこんな心境の時に、こんなものを聞いてしまったのだろうと瞳子は泣き叫びたい気持ちになった。
また、ズトンと重たい石が胸に落ちてきたような感覚だ。