「――――本当に、シン君は良い子ですね。私(わたくし)を気遣って、此処に連れてきて下さったんですよ」
「ああ。自慢の弟子だ」
「………随分、素直ですね」
クスクスと瞳子は、口元に軽く握った左手を添えながら笑う。
普段は、そんなことは言わないのにどうしたのだろうと頭の片隅で思う。
「うるさい。―――トーコが此処に来たせいだ」
「あら、何故私(わたくし)のせいなんですか?」
何故か、耳まで赤くなって屁理屈を言うウィリアムに更に茶化しを入れてみると思った通り、ますます顔が赤くなる。
「やっ、喧しい!俺のテリトリーにお前が入ってくるなんてっ――、アンタはいつも俺を乱すっ…」
「ウィリ、アムさん……?」
真っ赤にした顔を右腕で隠しながら吐き捨てるようにそう言ったウィリアムに瞳子は困惑を隠しきれない。
乱すとはどういう意味なのか。
ただ、そう問いたくても眉にしわを寄せ、どこか哀しそうに此方を睨むウィリアムを見てしまったら喉が自然と詰まってしまった。
中庭には何とも言えない変な空気が流れる。風が冷たくなってきた。そろそろ陽が暮れる。
「―――ウィリアムさん。シン君が帰ってきたら、屋敷に戻りましょう。もう終業時間ですから」
そう瞳子が言っても、ウィリアムは俯いてしまって反応がない。
瞳子は仕方なく彼に近づき、肩に手を置いた。
「ね?ウィリアムさ………、――え?」
瞳子は、目を見開いた。
再度促そうとして置いた左手にはいつの間にか、彼の右手がしっかり重なっていたのだ。彼の表情は未だに俯いていて分からないのが、余計に混乱させた。
「ちょ……、ウィリアムさん…?」
瞳子は、とっさにその手を引こうとするが、ウィリアムに更に強く指を絡めて握られてしまい、失敗する。
「ウィリアムさん!一体……ど
うしたんです…!」
「―――知るべきなんだ、アンタは」
「え―――?」


