そして今に至るのだけど。
颯がバイトしているというファミレスで、早瀬さんと向かい合って飲み物を飲んでる。
一体何なの、この状況。
あたしはなぜあの時早瀬さんの名前を口にしたのだろう
きっと、女の子の名前なんて早瀬さんしか知らなかったから、ただそれだけ
颯が学校中の女の子のアドレス知らないはずないって思ったから、それだけよ
「月島さん、電話鳴ってるよ」
「え?」
テーブルの上に置いてある携帯電話が震えてる。
ちらりと早瀬さんの顔を見る。
せっかく来てくれた人の前で電話に出るのは、さすがに失礼よね
「出ないの?切れちゃうよ」
あぁ、出ていいものなの
ピッとボタンを押して、携帯を耳にあてた。
「……………」
『……………』
相手が一向に喋らない。
…無言電話?悪質な悪戯ね
『……何?』
数秒後、受話器の向こう側から聞こえてきた声
自分からかけてきたくせに、第一声が"何"って何よ。
それより、この声って…
「そら?」
『そーだけど、何』
何故、そらがあたしに電話を?
『すっげ前に着信あったんだけど』
そらの言葉ではっと気づく
そういえばあたし、さっき発信ボタンを押したんだった。
それよりもあれから3時間も経っている、折り返してくれたのはいいけれど、明らかに遅すぎる。
それに颯が来てくれたから、もう用はない。