刑事部長はちらりと達郎を見た。

警察関係者の身内とはいえ、民間人である達郎に、捜査情報を聞かせてよいものか、と思ったのだろう。

「構いません。続けてください」

岸警部はそう促した。

「では…田村清の殺害現場から見つかったナイフの件ですが、ナイフと田村の腹部の傷が一致しました」

田村殺害の凶器は現場に落ちていたナイフ。

傷と一致したことは重要な手掛かりだ。

ところが。

「ナイフは小林誠との傷とも一致しました」

「なんですって?」

あたしは思わず声をあげてしまった。

しかし刑事部長もあたしと同じ戸惑いを感じていたらしい。

「ナイフからは指紋が検出されましたが、それは田村のものでした」

刑事部長の口調には、不可解という色がにじんでいた。

「ナイフには、被害者の指紋のみですか」

達郎が、不意に口を開いた。

誰に聞かせるというわけでもない口調であったが、あたしたちは一斉に達郎の方を向いた。