―コンコン、 荒い手つきで、涙を裾で拭う。 『・・・・・だれ』 「 彰人です」 その声に、彼女は小さくため息を零す。 『自由を楽しんで、って言ったのに』 普段 主の世話のため、自由がない執事のために、少しでもの自由を与えたのに。 なのにどうして、主のところへ来るのよ。 「別に私は、自由など結構なのですが」 その言葉にまた、ため息が一つ。 『そこまで、“執事”の務めが好きなんだ』 それは小さな声で、彼には届かなかった。 また涙で潤う瞳を、荒く拭う。