「…碧衣?どうした…?」
優しく、あやすように響く颯の声が、心に染み込んでいく。
あぁ…
颯だ…
私は颯の存在を確認するように、ギュッと目を瞑る。
「颯…?」
息遣いだけが聞こえる向こう側に、私はそっと、颯の名前を呼ぶ。
「…落ち着いた?」
ほっと、ため息が聞こえる。
「心配、した。」
呟くように、颯は言葉を紡いだ。
「ごめんね…」
「また謝る。俺はお前に頼まれて心配してる訳じゃないから謝んなくていい。」
少しきつめの口調で、颯は私に言った。
「ありがとう。」
ごめんねの代わりにそう言うと、颯はおう、とだけ返事した。

