じっとこらえていると、ポケットに入っていたケータイから、オルゴール調のメロディーが響いた。





手の甲で無理やり目を擦って、私はディスプレイを見る。



ぼやけた視界に入ったのは……






颯の名前だった。







通話ボタンを押すと、低めのよく響く声が聞こえる…。


「…もしもし、碧衣?」





颯の声を聞くと、安心からか、よけいに涙が溢れてきた。





「碧衣…?」


返事をしなきゃと思うのに、うまく声にならない。




「そ、う…」



やっとのことで出た声は、今にも消えそうな大きさだった。