「碧衣、悪いけど、お母さん帰りが遅くなりそうだから、ご飯先に作って食べておいてくれる?ごめんね。」 それだけ言うと、せわしなくお母さんは電話を切ってしまった。 …私の家族関係は、バラバラなまま、どうにもならない。 お母さんもお父さんも、仕事で忙しいまま… だけど、お兄ちゃんは大学受験が近くなってきたために、夜遅くまで学校にいる。 それが、救いだ。 両親の仕事の成果か、家だけは大きい。 ほとんど使わないくせに、無意味に広いのだ。 私は自分の部屋を出て、リビングに向かった。