息が上がって思うように呼吸ができない。 それでも、走らずにはいられなかった。 幸せそうに微笑む人ごみをかきわけて、私はひたすら走った。 ブーツだから、足がちぎれそうに痛い。 だけど、一刻もはやく海へ行きたかった。 …颯に会いたかった。 海に近づくにつれて、辺りは暗くなり、人はほとんどいなくなる。 ザン… 海の唸るような音だけが、私の頭に響いていく。