「ごめんね釉梨…ママ、仕事でどうしても抜けられなくて…。」
「いいよ。じゃあねママ。」
釉梨はヒラヒラと手を振る。
「まったく…。早く帰ってって感じね。」
呆れたように笑いながら、釉梨のお母さんは俺を見てゆっくりしていってね、と言い残して病室を出ていった。
釉梨は恥ずかしそうに顔を下に向ける。
それから、そっと俺の手を握ってきた。
「釉梨…。」
握り返すことも振り払うことも出来なくて、俺は釉梨の名前を呼んだ。
「ねぇ颯。私のこと、好き?」
「…好きだよ。」
「…じゃあ、キスして?」
「…釉梨。」
「お願い…、キスして。」
釉梨は、きっと…
不安だったんだ。
学校に行けない時間が長い分、俺が他の人に向かないか、不安だったんだと思う。
そっと、釉梨の唇をふさぐ。
そのたびに、釉梨は嬉しそうな、泣きそうな顔をした。

