「…私は、颯の彼女です。だから、颯は渡せません。」 とっさに、私はそう言っていた。 颯は私の彼氏なの。 だから… だから、誰にも譲らない。 だだっ子みたいに、私は釉梨さんに言っていた。 「颯のこと、諦めて!」 いや。 イヤ。 嫌。 颯の名前を呼ばないで。 颯の視線を奪わないで。 幼いワガママがどんどん溢れて、私の頭を埋めていく。 だけど… 私から他のどんなものでも奪えばいい。 だから、颯はとらないで。