「あ、ありがと…。」
それ以上言えなくて、私は黙ってしまった。
お兄ちゃんが、うまいって言ってくれた。
それだけなのに、油断すると、涙が出そうなくらい嬉しかった。
「あの…さ、」
その後、お兄ちゃんが覚悟したように私を見据えた。
「今日、俺んとこによく分かんねぇ男が来てさ…。ソイツが、『碧衣はお兄さんが大好きなんです』ってワケ分かんねぇこと言いだすんだよ。俺、かなり焦った…。けど、ソイツ、真剣に『碧衣はお兄さんと仲良くしたいって思ってます』って言うから…。」
颯…
わざわざお兄ちゃんを探して…
私のために、そこまで…
「…今まで、八つ当たりとかしてごめん。」
お兄ちゃんが、頭を下げた。
「やだ…顔あげてよお兄ちゃん…お兄ちゃんも、受験とかで大変なの知ってるから…。」
「けど…暴力はどんなことがあってもしちゃいけなかったよな…。ホント、ごめん。」
…私は、ただ頷くしかできなかった。
涙が次々に溢れてくる。
嬉し涙。
感動の涙。
よく分からない涙が頬を伝う。

