フェイクハント

「どうか落ち着いて聞いて下さい。私、色々調べてみたんです。もちろん、今捕まっているチェスターが犯人なのは間違いないですが、チェスターはもう一人いるのではないかと疑っております。あなた達の同級生三人を殺した犯人についてです。そこで同僚の早瀬まで、内密に調べることになったのですが、私は早瀬を信じたい。だからこそ、奥さんに協力をして欲しいのです」


「私に何を協力しろと仰るんですか？」


　涼は語気を強めて、篠田を真っ直ぐ見据えた。


「車のトランクを見せて下さい」


「車のトランク？　それは一体……」


　篠田の意図が分からない涼は、不思議そうな顔をした。


「それは見せて頂いてから、説明しますので。内密にお願いしたいのです」


　篠田が軽く頭を下げると、「分かりました」と涼は答え、篠田と共に敷地内の駐車場へ向かった。

　車のトランクを見せて、何が分かるというのだろうか？　

　海人が犯人のわけはないが、篠田の意図が分からない。

　涼は駐車場が近づくにつれ、胸騒ぎがした。