フェイクハント

「そんなことがあったのか。典子は葬儀でも気丈に振舞っていたけど、精神的にかなり参ってたんだろうな」


「うん……河川敷にいた典子の気持ちは複雑だったと思うわ。静夫と同じ場所で、浮気相手の雪絵も死んだんですもの」


「そうだな。涼が見た時、典子は何を破ってたんだろう?」


「紙みたいなものだったと思うけど、次々にバッグから取り出して、何枚も破ってたわ」


「もしかして、それって写真じゃないのか?」


「写真かぁ! 云われてみると、そうだったのかもしれないわね。大きさも、写真くらいだったと思うし。私もこの間、帰ってきてから、中学時代に撮った写真を見たんだけれど、あの頃は私達みんな無邪気に笑ってて、静夫と遥と雪絵も生きていたのよね」


 涼は遠い目をして、中学時代を思い出しながらそう云った。


「そうだな……。もうあの頃の俺達はいないんだな……」


「そうね……」


 海人の言葉が、痛いほど胸に突き刺さった涼は俯いた。