「はい、桂田でございます。あぁ海人、どうしたのこんな朝早く。 えっ静夫が? 嘘でしょ……分かった……すぐ向かうわ」


 早瀬海人から、桂田静夫が殺されたという連絡を受けた、妻の桂田典子は、電話を切った後、のろのろとリビングのソファに倒れ込んだ。

 大きめのソファでは、一人じゃ広すぎるせいで寂しさを増す。

 しかし典子は、まだ静夫がいなくなったという現実を、まだ実感できずにいた。

 そして、まだ夢の中にいるような中途半端な状態で、ソファから立ち上がると、警察署に行く支度を始めた。