「さっき携帯にも電話したんだけど、電源が入ってないみたいなのよ」


 典子が吐息混じりにそう云うと、雪絵が誰にともなくつぶやいた。


「遥、帰っちゃったのかな……」


「俺達五人だけでも、静夫を見送ってやろうぜ。遥もそのうち戻ってくるかもしれないしさ」


 秀樹が腕を広げて無理矢理笑顔を作ると、五人はグラスにお酒を注ぎ、それぞれ今までの思い出話しをした。雪絵は静夫の話しが出る度に泣いて、相変わらず目が真っ赤に腫れている。

 典子は気丈に雪絵をなぐさめていた。本来なら雪絵が典子をなぐさめる立場なのだろうが。 涼はそんな典子を見て声をかけた。


「典子、疲れたでしょ、お線香は絶やさず見てるから、少し横になったら」


「ありがとう、疲れているはずなのに神経が昂ってるみたいで眠れそうにないわ。でも大丈夫よ」


 典子は疲れきった顔で微笑した。

 突然、ブーブーブーッ!! という音がして、みんな一斉にキョロキョロした。