「静夫から浮気してるなんて話し聞いたこともないよ。それに俺から見て、静夫は典子一筋だったし。涼も、いつも云ってただろ? 仲の良い夫婦だよねって」


「確かに……私から見ても仲の良い夫婦に見えたし、静夫が遥を秘書にしたのだって、遥の仕事の能力を認めたからだし、そこに恋愛感情があるなんて思えなかった」


「そうだな。遥と典子じゃ、まるで正反対の二人だし、静夫が将来の伴侶にふさわしいと思って結婚したのは典子だったんだしな」


 その言葉に涼は深く頷いた。

 そして気持ちを切り替えると、今度は海人に捜査の進展を訊いた。


「静夫が殺害された場所は河川敷だろ? そこには不審な足跡はなかったんだ。可能性としては、ボートか何かで川を渡って逃げたんじゃないかと思う。凶器は『フェイクハント』の市販されてるおもちゃのムチだったよ……三件目の事件と同じ物だ」


「そう、チェスターはゲームの中じゃヒーローなのに、現実じゃ殺人鬼だなんて何だか皮肉よね。全国で市販されてる物が武器だなんて、チェスターを特定するのは時間がかかりそうね」


 そう云って涼は溜息をついた。