海人と篠田は、鑑識の結果を聞くと同時に、報告書に目を通すと、足跡は河川敷の入り口から殺害現場まで、警察関係者のものとホームレスの老人のものしかなかった。

 そして凶器はやはり、三件目に起きた、十代の学生が殺害された時に使用されたものと同じで、どこにでも市販されている「フェイクハント」の武器である、ムチだということが判明した。


「早瀬、チェスターはいかにして足跡を消して、何処に逃げたんだろうな。まさか足跡のつかない幽霊の仕業だということはあるまい」


「篠田さん、チェスターは川を渡って逃げたってことはありませんか? ボートか何か用意してあって、川を渡り向こう岸へ逃げるという可能性は考えられませんかね? それなら足跡をつけずに逃げられるんじゃないでしょうか」


「ありえるなぁ。しかし向こう岸は他県だ……。丁度川が県境になっているからな。そうすると、やっかいだぞ。しかし可能性が少しでもあるものは、全て当たってみる必要があるだろうな。何せ四件も起きてしまったんだ。協力を要請するしかなさそうだな」