それによくよく思い出してみれば…

あたしさっき「梨絵」って名前で呼ばれてたんだ…

思いだすと、耳がこそばゆくなる。


顔に熱が戻ってくる。


「梨絵」

なにげなくみんなが呼ぶあたしの名前。

なのに久哉くんが呼ぶとちょっとだけ特別なの。

なんだかきゅんってなる、そんな感じ。


幸せな時間は長く続かないって言うのは本当で、あまりにもあっけなくロッジに着いた。


「送ってくれてありがとう…。」

あたしはなるべくドキドキを押さえるようにして言った。
じゃなきゃ、気持ちが伝わってしまうような気がしたから。

「いえいえ。」


久哉くんの手が離れる。

なんでだろう…

その手に触れるのは2回目だっていうのに…

なんだか寂しくなった。