人が大体いなくなった時間に二人でそろそろ帰ろうと教室を出た。
あぁ、部活してない友達って智樹だけだから助かったなぁ…
校舎を出たところで智樹にグイッと腕を引かれて校舎の陰に無理矢理押しこめられた。
ここ、埃っぽくて狭いんだけど!
「何、智樹!?」
智樹はシーっと私の口元に人差し指を当てて外の様子を伺っていた。
「彼氏、いるぜ?」
「っ!」
瞬時に息を潜め、身を隠す。
康平、まだいたんだ…。
またツンッと鼻頭が痺れる。
「…ってか、なんで隠れてんだろ。
はっきりさせなきゃなのにな…」
「綺袮…」
またじんわりと瞳が濡れる。
あ、私智樹と手ぇ繋いでる。
康平と繋ぐ時は拭かなきゃだよね。
他の男と繋いだなんて知ったら、もう繋いでくれないかな…?
「綺袮、辛いなら止めて、俺にすれば…?」
「…は?
何の冗談「本気。
ずっと応援してたけど、お前が泣く事になるなら話は別だから。」
グッと顔の距離が縮まる。
お互いの鼻の先が触れるぐらいに。
あ、キス…
智樹としたら…私もう、康平の事は忘れなきゃ。
康平も、嫌だよね、間接的に男とキスする事になるし。
私も凄く嫌だよ。
康平があの子とキスした唇で私にキスしてたかと思うと、泣けてくる。
「智樹、私もう限界みたい…」
目を閉じたらポロッと涙が零れた。
それと同時に感じる智樹の吐息。
こんな私は限界、迎えました―…