「今更ね……。さっきまで協定の事をさんざんあたしに話してたとゆうのに、ね」
意地悪く微笑んで見せると、永遠はあたしの視線から逃れるように顔を俯かせた。
「いざ協定を結ぶってなるとな……蒼が魔術族だって確証がねぇと思って……」
……本当に今更ね。
永遠とゆうヴァンパイアに呆れ、少し不安になる。
でも、今のあたしにはヴァンパイアの……"冠咲家"と協定を結ぶ事にメリットがある。
あたしは幾度と無く空を見あげる。
早くしないと……時間が無い。
もう少しで太陽が完全に沈んでしまう……。
「永遠は人間と魔術族を見分ける方法、知ってるの?」
「知ってるけど……ほんとなのかどーか……」
あたしが優しく問い掛ると、永遠は口籠もった。
「どんなの??」
「首筋に継承者である証の刻印があるって……」
「……っ!」
永遠の言葉にあたしは動揺を隠せなかった。
どこからそんな情報が漏れてしまったの??
魔術族であるあたしの場所を知られてしまっているだけでなく……特徴まで。
……こんなことに驚くなんて、それこそ今更よね。
よくよく考えてみれば、今までだってヴァンパイアはあたしに会いに来てるんだし……。
どこから情報がバレててもおかしくない。
あたしは制服のネクタイを緩め、シャツの釦を手をかける。
「っ?!何してんだよ、蒼!!」
焦ったような永遠の声が聞こえても、手元は止めずに視線だけを永遠に向ける。
「何って、あたしが魔術族である証拠……見せないと協定結べないみたいだから、見せようと思って」
あたしは3つ目までシャツの釦を外し、襟を広げ首もとを露にした。
「っ!!……それって」
あたしの首筋を見て永遠は息をのみ、険しい表情で言葉を紡ぎだした。
「蒼って……ほんとに魔術族の後継者なんだな」
「そうよ。これで協定を結んでもらえるかしら??」
やっと納得してくれた永遠にほっとしながら、あたしは微笑んだ。
永遠の見つめる先、あたしの左側の首筋、鎖骨かけて大きく刻まれた……
――――翼のはえた十字架の刻印が魔術族である証

