「なっ……?!」
永遠は驚きを隠しもせずに声を漏らした。
目は見開かれて、口は閉じることを忘れてしまったかのよう……。
しばしの間驚いた様子を見せた後、やっと言葉の意味を理解したらしい永遠は呆れたため息を吐いた。
「突然なんだよ?帰りなさいって……。そんな一方的な事、言われた通りにするわけねぇだろ」
「……これは永遠のために言ってるのよ?あなたは何も聞かず……何も知らずにいるのがいい」
文句有りげに低い声で呟く永遠にあたしは変わらず瞳を見据える。
そんなあたしを少しの間睨み付けた後、困ったように視線を彷徨わせた。
「帰るか帰らねぇかを決めんのは俺だ。……俺だって目的があってここに来てんだからさ、帰れって言われただけで帰るワケにはいかねぇんだよ……」
そう呟く永遠の瞳には、決意の意志よりも困惑が渦巻いていた。
「そう……。そう言えば魔術族と協定を結ぶために来たと言っていたわね」
あたしは教室で永遠が言っていた事を思い出しながら、独り言のように呟いた。
「……ならあなた達と協定を結ぶわ」
あたしは永遠の瞳を見つめながら、強い口調で言葉を紡いだ。
「協定を結ぶ……だって?」
永遠は自分の耳を疑っているのか、あたしが言った言葉をただ繰り返すだけ。
「さっきまであんなに無理みたいな事言ってたのに……何で」
「協定の条件は何?」
ぶつぶつと何かを言っている永遠にあたしはゆっくりと問い掛ける。
「……」
永遠に問い掛けても返事は無く、永遠の瞳がただあたしを見つめるだけ。
「……永遠??」
長い沈黙が続き、時間があまり無いあたしは永遠が納得するのを待っていられない。
「蒼って……」
永遠がやっと口を開いたのは太陽が傾き、空が藍色とオレンジ色のグラデーションになりはじめた時だった。
「蒼って……ほんとに魔術族の王位継承者なのか??」
永遠が今更な事を口にした事にあたしは何より驚いた。

