†Bloody Cross†

「くっ……」
時計塔の扉を空いている手で開くと、眩しい夕焼けどきのオレンジ色の陽があたし達の身体を照らした。
陽によって照らされた永遠は小さくうめき声を上げると、顔をしかめた。
……やっぱり純血のヴァンパイアでも陽の光には弱いのかしら??
その様子を横目で見ながら、永遠の身体を支えて歩く。
――――………
「……あ??」
しばらく歩いたところで隣の永遠が驚きの声を上げた。
「身体が……軽くなった気がする」
変わらず驚いた顔の永遠を見て、あたしはある事を思い出した。
……いつの間にか術範囲から出てたみたい。
時計塔の方を振り返ってみると、いつの間にか広げた術範囲から出るくらいまで歩いていた。
「1人で歩ける??」
肩にかかる永遠の重みがほとんど無くなったことに気付き、試しに問い掛けてみる。
「あぁ……わりぃな。……ありがと」
あたしね肩に回していた腕を話すと、永遠は気恥ずかしそうに呟いた。
その言葉に、あたしは少なからず驚いた。
「お礼とか……言えたの」
小さな声で言ったけど、永遠には聞こえていたみたいで、永遠はあからさまに顔をしかめた。
「礼くらい言える。……普通だろ??」
あたしの言葉ですぐに不機嫌になってしまった永遠は、宵闇色の前髪を掻き上げた。
「確かに当然の事だけど……今まであたしのところに来たヴァンパイアは礼なんて言わなかったわ」
あたしのところに来たヴァンパイアの刺客はお礼どころか、挨拶もまともにできてなかった……。
「そうか……今まで来た"ヴァンパイア"??」
ヴァンパイアの部分を妙に強調してゆうと、訝しそうな顔であたしを見た。
――――今のは失言だった……。
自分の言葉を思い出して、あたしはため息を吐いた。
まぁ、今の失言はちょうど良かったのかもしれない……。
「ちょうど良かった。永遠に話があるって言ったでしょ??」
オレンジ色の夕焼けから深い森の木陰に入った時、あたしは永遠を見てそう切り出した。
「……何だよ、話って??」
永遠は立ち止まると、あたしを睨むように見返してきた。
それを真っ向から受け止め、強い口調であたしは言い放つ。
「この学園から出ていって。……自分の家に帰りなさい」