あたしが次に開いた書物は"闇世界歴史書"
すべての中立の存在である著者が、ただひとつの偽りも無く事実だけを書いたゆう書物。
最後は裏世界の者に殺されたと聞いているけど……。
あたしはゆっくりと書物を開く。
歴史書にはあらゆる種族の歴史が書かれているみたい。
人間、人狼、夢魔、神と死神、天使と悪魔やあたし達魔術族の歴史。
そして……
――――ヴァンパイア
「魔術族の歴史もちゃんと書いてある……」
思わず見入ってしまうほど、興味をその内容にはそそられる。
端からすべての歴史を見ていき、とうとう目的のヴァンパイアのものにたどり着いた。
恐る恐るページをゆっくりとめくる。
「……これって」
その内容に、あたしは思わず眉間に皺をよせる。
静かな書庫にあたしが書物をめくる音だけが響く。
何度もそれを読み直した後、あたしは椅子から立ち上がった。
「今日はもう帰る。空間をつないでくれる??」
「かしこまりました。……書物はどう致しましょう??」
慌ただしく告げたあたしに、空中からゆったりとした声が呟きかけた。
「片付けておいて」
「承知いたしました。では……我が主、お気をつけて」
使い魔のその言葉を最後に、目を閉じたあたしの身体は再び浮遊感に包まれた。

