†Bloody Cross†


あたしが呟いてすぐ……




――――書物が空中を風に流れるように飛び、目の前の机の上に静かに積み重なりはじめた




10冊、20冊と机の上に書物が増えていく。

しばらくした頃、机の上が大量の書物でうめつくされた。

「"牙來条"と言う言葉が入った書物はこれですべてです」

何も見え無いあたしの隣で、若い男性の声が呟いた。

その頃には、書物が空中を移動することも無くなっていた。

「分かった。……ありがとう」

「礼は必要ありません、我が主。これが仕事なのですから」

あたしが礼を口にすれば、何度目になるか分からないけれど……いつもと同じ言葉が返ってくる。

あたしにも姿の見えないこの使い魔の声は、あたし以外には聞くことすらできない。

魔術族当主のみが入れる部屋の番人や仕事の手伝いをしている。

「また何かありましたら、いつでもお申し付けください」

そう呟く声が耳に届いてすぐ、使い魔の気配が傍から消えたのを感じた。