――――ギィィ……
鈍い音を響かせ、時計塔の扉が開く。
入ってすぐの部屋は窓が無いせいで暗闇につつまれ、扉から差し込む光で一瞬だけ薄明るくなった。
部屋は作り自体は少し古いが、埃ひとつ無い綺麗な状態で、家具もないただの四角い箱。
あたしは後ろ手で静かに扉を閉める。
再び闇が降りた部屋を突っ切って、あたしは部屋の角へ向かう。
そこにあるのは2階へ続く螺旋階段。
でも螺旋階段を上ることはせずに、階段の前に立つ。
あたしは空中に短剣を出現させる。
空中に浮かび光を放つ短剣を右手で握ると、左手首に短剣を走らせる。
「つっ……」
鋭い痛みの後、手首からは赤い血が滴り落ち、床に血溜りを作っていく。
身体から流れ出た血は床を這うように自ら動き、血で魔方陣を描いた。
あたしは描かれた魔方陣の上に立つと、一度深呼吸をする。
「我は、魔術族を統べる者。直ちに扉を開きなさい。行き先は……」
床に描かれた魔方陣が紫の光を放ちはじめ……、
「――――我の書庫へ」
淡かった光は、輝きを増してあたしの身体を包み込んだ……。

