「ねぇ、主に従順な君には出来ないんでしょ??」
「黙れ……」
彼方はあたしが首を縦に振れないのだと……手助けどころか許可すら出せないのだと分かっているのだろう。
彼方に非道だなんて口に出来るほど、あたしだってイイ行いをしてきたわけじゃない。
でも……
「どうし、て……」
どうして刹那がそんなことをしなきゃいけないの……??
どうして……永遠を殺そうとしているの……??
あなたの仲間なんじゃ、ないの??
「ん??その【どうして】はどういう意味なのかな??保険医に行かせた理由か、それとも……」
「すべてよ、ッどうして……??永遠はあなたの仲間じゃ、ないの??」
仲間を殺そうとする彼方の思考が理解出来なくて、哀しくて……彼方の言葉に被せて叫ぶように言い彼方を見つめる。
見つめた先にある彼方の瞳はこれ以上ない程見開かれ、あたしと目が合うと、すぐ目を反らされる。
「仲間なんかじゃ、ないよ。理由は、蒼ちゃんが……仲間になってくれたら、教えてあげる……」
あたしの呟くような問いに、彼方は嘲るでも笑うでもなく、途切れ途切れにそう呟いた。
俯き隠れた表情では何を考えているのかは分からないけど……彼方の声が微かに震えているような、そんな気がして……。
その震えが、怒りからくるものなのか哀しみからくるものなのか……それ以外の意味合いがあるのかもしれないけど、あたしには分からない。
「蒼、こんなヤツに構ってる必要ない。早く刹那を追い掛けなよ」
今まで黙り込んでいた翡翠が静かにそう言ったのが聞こえ、少女を見つめていた瞳を翡翠へとずらす。
目が合うと翡翠は困ったように微笑み、握り締めていた短剣を袖口に戻した。
「で、も……」
刹那を追い掛けなきゃいけないのは分かってるけど、正直翡翠と精神が彼方になってしまっている少女を2人きりで置いていくのは……まずい気がして。
「信用してよ、姫」
あたしが言葉を濁せば、優しい声音と共に自分より大きな掌でそっと頭を撫でられた――――……

