「……そう」
何事も起きていないうちに探しだしてくれたことに安堵し、ホッと息を吐き出す。
「安心するのは、まだ早いよ」
安心しきっているあたしを制すように、低く呟かれた声にピクリと身体が反応する。
音をたてずにあたしの隣に下り立った翡翠は、隣に横たえられている少女を見て盛大に溜め息を吐くと、その少女を軽く横抱きにした。
「今は僕の術で身体を自由に出来ないように保健室に拘束してるけど、アイツも黒魔術使いだ……あの程度のはすぐに解かれる」
だから、あたしにも来てほしいのだと……口で言わなくても翡翠の瞳がそう言っている気がした。
まだ闘っている2人を一瞥すれば、未だお互いに均衡を保った攻防を続けている。
2人のことが心配ではあるけど今は少女をどうにかするのが優先と考え、翡翠に向き直り小さく頷く。
瞬時に翡翠とあたしは気配を消して木々の枝を走り抜けながら、急いで保健室に向かった――――……
音も無く姿も気配も消した2人に気付いた白夜は、太刀を振るう動きを止める。
「……白銀、貴様に聞いておきたいことがある」
「あ……??何だよ、聞きてぇことって」
白熱していたと言っていいほどの攻防を突然中断されて、白銀は不機嫌そうに顔をしかめる。
そんなこと微塵も気にした様子の無い白夜は、ふざけるわけでも無く太刀を構えたまま静かに問う。
「何故貴様はここにいる??何故、蒼の護衛になった??」
「ハァ??今更、何を言ってんだよ」
白銀は白夜の言葉にいぶかしげに眉根を寄せる。
「今更ではない。貴様らが敵として来たとき、護衛になった瞬間から思っていたことだ」
「……テメェは端から俺等のことを信用して無かったってワケか。まぁ、そうだろうとは思ってたけどな」
「蒼が心を開いてしまえば、相手に対し無防備になる。俺は貴様等がここにいて、護衛をする確かな理由を知っておく必要がある。俺が納得出来ないような理由ならば、今ここで貴様を切り捨てる」
「俺は……――――」
再び太刀の切っ先を白銀に向けながらそう呟く白夜を見つめながら、白銀は口を開いた――――……

