白夜の腕から逃れようとしていた動きを止め、もう一度白夜の表情を伺おうと顔を覗けば、腰に回されている片腕で更にきつく抱き締められる。
首筋に顔をうずめられては白夜の表情を見ることは出来ないけど、一瞬だけ視界に入った哀しげな瞳を思い出すとなんとも言えない気持ちになる。
心配をかけてしまったわよね……。
白夜だけじゃない……さっき会った翡翠にも、きっと心配をかけてしまった……。
「……ごめんなさい、白夜。心配を、かけてしまって……」
そっと白夜の首に腕を回し、白夜がするように首筋に顔をうずめる。
「そう思うのなら、少しは俺等を頼ってほしいものだ……」
はぁ……とわざとらしくあたしに聞こえるように溜め息を吐く白夜の手は、少し震えているように感じる。
「なぁ……このままテメェの脳天、ぶち抜いていい??」
「え……??」
「出来るのなら、やってみろ」
地を這うような低い声で呟かれる凄く物騒な言葉が聞こえて、驚きで顔を上げると白夜の頭に突き付けられている見覚えのある銃。
鋭い眼光で白夜を睨み付けるエメラルドとシルバーのオッドアイに金色の髪。
「あっそ……マジでやるけど、後から文句とか言うなよ」
「だから、出来るのならやってみろと言っているだろう。貴様こそ、実は殺せないんじゃないのか……腑抜けめ」
「しろ、がね??……ッ駄目、銃しまって!!白夜も挑発しないで!!」
今にも引き金にかけた指を引きかねない白銀を牽制しつつ、白夜に注意をする。
「さっさと姫のこと離せよな。姫が嫌がってんだろ」
「貴様の目は節穴か??嫌がっているわけがなかろう、邪魔をするな」
「……あたしの話聞いてる??」
「あァ?!!邪魔はテメェだ。姫から離れろって言ってんだろ」
「騒がしい奴だ……弱い犬ほどよく吠えると言うが、嘘では無いようだな」
「テメェもいつになく饒舌じゃねぇかよ」
――――バァン
「な、ぁ??」
あたしを抱き締めたままの白夜と今にも銃を撃ちかねない白銀の元に、突然の銃声が鳴り響いた――――……

