人目に晒された自分の手首を見つめながら、さっきの様子を思い出す。
「これ、は……」
手首にこんなにもありありと指の跡が残るようなことをされたのは、記憶に一度では無いけれど……それでも記憶に新しいのはさっきの出来事。
油断して彼方に腕を締めあげられた時に付いたものだと簡単に予想がついたけど、跡がつくほどの力で押さえ付けられていたのかと驚いた。
「蒼が追い掛けていったアイツに、やられたんだろう……??痛い、か??」
親指の腹で手首をなぞると、さっきとは打って変わった優しい声であたしの顔を覗き込んでくる。
「痛くないわ。今まで気付かなかったくらいだし……」
本音をそのまま口にして微笑んでみせれば、白夜はリップ音を響かせながら紅くなったあたしの手首に口付けるとそっと手を離した。
「俺の心配などせずに、自分の心配をしろ。蒼は敵を前にしても、無防備すぎるんだ」
「無防備……??そういえば、さっき……」
叱咤するような白夜の言葉を意識半分に聞きながら、同じようなことを翡翠にも言われたことが頭をよぎる。
同時に思い出されるのは、さっきの翡翠の行動で……目隠しされてたから確かに何をされたかは分からないけど。
「口唇がどうかしたのか??」
「さっき、翡翠になにか……目を隠されてたから、よく分からないけど」
無意識のうちに指で口唇をなぞっていたあたしは、回想しながら途切れ途切れに呟く。
「ほぅ??それは、こんな風だったか??」
「え……??」
スッと視界と光が遮られ、先程のように目元に触れてみればそこにあるのは白夜のものであろう掌。
――――フニッ
口唇に触れる柔らかい感触すらさっきと酷似していて、白夜の掌をずらした先にある白夜の紅い瞳に顔が熱くなった――――……

