翡翠の行動に子首を傾げながら、白夜がいるであろう場所に歩を進めていく。
その場所に近づくにつれて白夜の気配が確かになっていき、同時に白夜と同等の気配があることに気付いた。
「この気配は……永遠??」
白夜と同等の気配の本質は、あたしがさっきまで感じていた永遠のものと同じ。
ただ永遠の異常なまでの力の増幅に、白夜に対する心配と永遠に対する興味から足に力を込めて走り始める。
しばらくして夜たちの気配の付近に辿り着いた矢先、白夜と永遠のものじゃない弱っているもうひとつの気配が近付いてきた。
――――ガサガサッ
予測通り草木の間から、白夜が少しグッタリしたひとりの少女を横抱きした状態で姿を現す。
「やはり、蒼だったか」
「白夜……ッ、その怪我……」
白夜の姿に視線を向け、怪我が無いかと見上げれば、頬に出来た真新しい真一文の傷が目に入る。
痛々しくて未だに流血の止まらないその傷からは、ついさっき出来たものであることと深くまで傷付いていることが理解出来る。
「こんなもの掠り傷だ、大したことはない」
「掠り傷なはずないじゃない……」
痛々しく流れ続ける血をすくうように、白夜の顎から傷口にかけてを人差し指でなぞる。
傷口付近をあたしの指先が掠めると白夜の肩がピクリと揺れ、それが痛いだろうことが分かる。
「やっぱり、痛い……??」
「大したことはないと言っているだろう??」
あたしの問い掛けに予想通りの白夜らしい応えが返ってきて、あたしは安心とも呆れともつかない溜め息を吐き出す。
「それよりも……」
それと同時に、いつの間にか少女を横抱きから肩に担ぐようにしていた白夜は、あたしの手を掴むと白夜の方に引き寄せ……
「この手首の跡はどうした??」
怒ったような低い声で問い掛けてくる白夜によって掴まれた手は、白夜の目鼻先の位置まで持ち上げられる。
白夜が見つめる先にあるあたしの腕は、手首から腕にかけてシャツが重力に逆らうことなく捲れ……
彼方によって拘束された時についた、紅い指跡が露になった――――……

