いつの間にか背後に回っていた彼方に剣をかまえようとしても時すでに遅く、両手首を彼方の片手によって易々と拘束される。
彼方は拘束したあたしの腕に手刀を落とし剣を掌から離させると、遠くへ蹴り飛ばした。
「ぁ……はなし、てッ」
「自分の敵に離してなんて言われて、離すはずないでしょ??」
身を捩って逃げようとしても手首の拘束に加え、彼方に腰にまで腕を回されては逃げられるはずがない。
今の自分の姿はまるで、さっき永遠に血を飲まれていた少女のように思えて、あたしは奥歯をぎりっと噛み締めた。
「そんな事したら口唇、傷付いちゃうよ??別に痛くないからさ、大丈夫だって」
「……触らないで」
「ヤダ。だって触らないと何にも出来ないでしょ……気持ち良いことも、ね」
耳元で囁く様はわざとらしく、あたしの口唇をなぞる指先は狡猾。
自由がきかず動けないというのに、思考だけが無駄に冷静で煩わしい。
後ろから抱き付かれる形で動きを封じられていたのが、いつの間にか壁に彼方と向き合い動きを封じられている。
変わらないのは、あたしの両手首があたしの頭上で束ねられ、両足の間に彼方の片脚あって動けないことだけ……。
「そうしていると、普通のか弱い女の子と変わらないね」
――――……だけと言うには全く動けなくて不便だし、人間なんかと一緒にされるなんて冗談じゃない

